ランニングエッグと共に駆け、
岡崎おうはんの魅力を広める。

株式会社太田商店 代表取締役社長
原 祥雅さんインタビュー

2023年に設立60周年を迎える株式会社太田商店。
明治23年(1890年)に米穀商・太田利吉商店が創業。その後、昭和37年(1962年)に飼料・鶏卵部門を分社独立して設立されたのが太田商店です。

太田商店と言えば、特殊卵「ランニングエッグ(※)」が有名。40年の歳月をかけて開発され、平成12年(2000年)に販売開始されました。「ランニングエッグ」を安心して安全に、美味しく食べてもらいたい。そう考えた同社は「卵かけごはん」イベントを実施。さらに、直売店「らんパーク」を平成18年(2006年)に、キッチンカフェ「たまごdeごはんOEUF(ウフ)」を平成24年(2012年)にオープンさせ、多くの方へ「ランニングエッグ」の味わいを知ってもらうために活動されてきました。

また、岡崎市内の「独立行政法人家畜改良センター岡崎牧場」が平成20年(2008年)に開発した純国産地鶏「岡崎おうはん」を平成22年(2010年)に生産開始。その卵は「プレミアムランニングエッグ」として、鶏肉は平成24年(2012年)に「全国地鶏・銘柄鶏食味コンテスト」の最優秀賞を受賞。現在も、さらに美味しい卵や鶏肉を追求されています。

【安全・安心・美味しい】の追求

今回、取材させていただいた原社長は、「ランニングエッグ」や「岡崎おうはん」といった商品を
「もっと多くの方に、美味しい卵や鶏肉をお届けしたいですね。そして、美味しさを常に感じてもらうために、新鮮な状態でお届けしたいと思います。」と語ります。
その実現のために取り組まれてきたことをお伺いしました 。

美味しい卵を新鮮な状態で届けるため
「太田商店が販売するランニングエッグは、他の卵と違い親鳥に与える餌についてもこだわりを持っています。弊社は飼料メーカーでもあるので、トウモロコシ、大豆から作るきな粉や胡麻、EM菌などを入れたりとさまざまな試験をクリアして、できる限り美味しいタマゴになるように試行錯誤をつづけてきました。ただ、餌にこだわることは他のメーカーさんにもできること。そこで私たちは常に新鮮な状態でお客様の手元に届くように、販売方法にもこだわっています。」

その活動は特にスーパーでの販売に表れています。通常の生卵は養鶏場で採卵され、洗卵・検卵等が行われてスーパーへ納品されます。その卵はバックヤードに入れられ、売場の状況を見て陳列されるため、陳列までに何日もかかってしまい、消費者の元に届くまでに新鮮さが失われてしまいます。

しかし、「ランニングエッグ」は、スーパーの売場に「直接」太田商店のスタッフが配達・陳列。採卵から販売まで すべてを管理し常に新鮮な状態で消費者の元に届くようにされているのです。なぜ、そこまでされるのでしょうか?

「新鮮な卵を届けることは、安心安全に食べていただけることはもちろんですが、お客様にはいつも美味しい状態で生卵を食べてほしいのです。そのためにすべてのスーパーの売場に直接スタッフが届けることも必要なことだと考えています。売場に直接並べることができないスーパーとは取引しないと、ハッキリと取引条件としてお伝えしています。」 まさに「ランニングエッグ」というタマゴを生卵という一番美味しい食べ方で食べてもらい、美味しいと感じてもらうために、こだわっているのです。

大きくなるタマゴ工場

「ランニングエッグ」の美味しさが広まると卵の需要も増えてきます。その需要に応えようと一日に処理できる卵の 数を増やすため、新しい機材の導入、新工場の新設、そしてランニングエッグを扱うたまごファームのM&Aなどにも原社長は取り組まれています。

「私たちは新しい工場から1日あたり約60,000個(約4トン)のランニングエッグを出荷しています。60,000個と聞くととても多いと皆さん感じますが、日本人が毎日食べる卵の数を考えたことはありますか?日本人は平均1日1個の卵を食べますので、日本全体で1日1億個を超える卵を消費しているのです。そう考えると私たちはまだ日本の1日あたりの全消費量のうち少量しか扱っていないのです。ただ、ランニングエッグは特殊卵と言う種別なので、それを扱う工場としては大型かもしれませんね。」

卵に対する思いも卵が嫌いという人はアレルギーの方や赤ちゃんを除くとあまりいません。その卵が持つ魅力をさらに伸ばしたいと原社長はいいます
「以前、私はIT系のサラリーマンをやっていてモノを売る商売をしていました。売る先は全国各地でしたが、全体のユーザー数は決まっていて、新規顧客は本当に少なくて、いかにライバル会社から自社の商品に乗り換えてもらうかのシェアの取り合いの業界でした。」

「けど、今卵を売ることになって、販売の対象者がすべての消費者になりました。子どもから大人まで全員がターゲットなんです。なので、とても面白いんですよ。さらに、皆さん卵が大嫌いという人はあまりいませんし、ほとんどの方は美味しいと言っていただけます。こんな食材はなかなかないですね。」
と卵の持つ魅力についても語っていただきました。

岡崎おうはんについて

冒頭でもお伝えしましたが、岡崎の純国産地鶏として「岡崎おうはん」が平成20年(2008年)に開発され、平成22年(2010年)に太田商店で生産・販売がスタートしました。

この純国産地鶏についても「こだわり」が。
現在、国内の養鶏に使われている鶏の95%は外国産。国産鶏の割合は5%ほどです。外国産鶏がだめというわけではありません。海外では少ない餌で大きく育ち、たくさんの卵を生んでくれる優秀な鶏があり、日本の鶏はこういった生産面では大きく離されているのが現状です。
その外国産鶏に対して日本の種を守っていきたいという考えや生産面の差を縮めるため、研究開発を重ねて生み出されたのが「岡崎おうはん」なのです。

この「岡崎おうはん」に原社長は期待を寄せています。
「岡崎おうはんは、まだまだ外国産の鶏には勝てませんが、他の国産鶏と比べれば、はるかに成績が良い鶏になりますので、着実に近づいてきていると思います。なので、業界としても注目されていて、他地域でも育ててみたいと言ってくださる生産者さんが増えて、出荷もされています。

さらに、岡崎おうはんと各地の地鶏をかけ合わせて、その土地のオリジナル地鶏を生産している地域もあるため、これからがますます楽しみです。」
「岡崎おうはん」は岡崎だけのものではなく、各地の地域活性化にも一役買っているのです。しかし、原社長はこれだけでは満足せず、食材として「岡崎おうはん」がもっと活躍できるはずだと考えています。

「まだまだ岡崎おうはんが食材として使われている機会は少ないと感じています。もっと広げられるポテンシャル はあると思っています。鶏肉としてもすごく美味しいですし、タマゴは多くの方に評価していただいておりますの で、あとは単価的にもう少し安く提供できるといいかなと思いますね。」

今後岡崎おうはんが活躍できる場面として
「いま流通している鶏肉は柔らかいものが多く一度にたくさん食べることができますが、岡崎おうはんは歯ごたえがある鶏肉になり、たくさん食べることには不向きです。いいものをちょっと食べるという、少し高級なお店とか単価の高いお店のほうが美味しく食べてもらえて良さが活かせるのかなと思います。」

「タマゴについて言えば、岡崎おうはんの黄身は外国産の鶏と比べても色鮮やかで黄身の比重が大きいのが特徴ですので、料理にたくさんタマゴを使うというよりも、1つの料理に1個のタマゴを使う料理のほうがより美味しく味わっていただけると思います。」

岡崎の魅力やこれから

小さい頃から岡崎に住んでいて、愛着もあり八丁味噌などの赤味噌も大好きな原社長。最近の岡崎にはすごく期待しているそう。大河ドラマ「どうする家康」やYouTuber「東海オンエア」などもあり、若い方から年配の方まで岡崎に来ていただき、とても活性化していると感じられているそうです。

「今は飲食に関連した仕事をしているので、地元の食材を使って前を向いて仕事をしている人が多いなと感じますね。なので、これからの岡崎にもすごく期待できると感じます。」

一方で、さらに盛り上げていきたいという思いも。
「JR岡崎駅周辺は名鉄東岡崎駅と比べると通過駅という感じで、通勤に使う駅でなかなか足を止めてなにかをするというのはないような、そんな駅だったのが、最近はちょっとずつ足を止めていただき、楽しめる駅になっているんじゃないかな。
イベントとかを通じて、うちも出店してもっと岡崎駅周辺は楽しめるイメージが付くようになる手助けができればと思っています。」

さらには、「岡崎おうはん」の「はん」という字を「飯」にした「岡崎おう飯」という岡崎グルメのアイデアも温められているそう
「岡崎おうはん」を使ったグルメといえば、2023年1月に期間限定で販売されたジェイアール東海フードサービスが販売している人気スイーツ「ぴよりん」に「岡崎おうはん」の卵を使ったり、八丁味噌を使った『徳川ぴよ康』なども好評でした。そのようないろいろなアイデアの「飯」があれば、もっと岡崎のグルメも面白くなってくるのではないかなと思いますね。」

今回の取材を通じて、株式会社太田商店や原社長からは常に「こだわり」が感じられ、とても感銘を受けました。そして、そのこだわりを達成させるために“駆け続ける”原社長にこれからも大きな期待を寄せたいと思います。

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